精神障害<神経症は原則認定対象にならない
 
 
◆神経症は、神経症性障害とも呼ばれます。
うつ病は脳の神経系の障害であるのに対し、神経症性障害は、一種の負の考えの癖からくるものです。
神経症性障害は、ストレスの多い環境や欲求不満が蓄積し発症します。一つのことが原因でそのことに対する反応が習慣化しそれ以降、恐怖的な反応になってしまうものです。
不安、恐怖、脅迫観念、抑うつが主な症状です。
 
強迫性障害
特定の事柄固執し、そうだからそうしないという意識が本人に強迫(無意味な行為を止められなく繰り返す)するほどになる状態です。手を何度も洗う、異常なほどの潔癖感、異常なほどの整理整頓をしなければ気が済まないなどです。
 
心気障害
自分の健康状態や身体的状態に関して確かな証拠がないにも関わらず訴えることです。ある診断に満足せず様々な検査を要求し、病院を転々とする傾向があります。
  
不安障害
生活の不安について心配することですが、心配や不安が過剰なものとなり、何をしていても落ち着かない緊張している状態です。
 
恐怖症性不安障害
特定の外的状態に異常な恐怖を感じそれが維持されることです。広場恐怖症や社会恐怖症などがあります。一般にいっぱいでにぎやかな場所でパニック発作を起こします。
  
離人症性障害
自分の体や精神から遊離している感覚が、長期にわたり持続します。自分について離れたところから見ている自分がいるような感覚で、自分について醜い、消極的な感覚を抱く場合が多いです。
 
 
◆なぜ、神経症は原則として認定の対処とならないのでしょうか?。
 
社会保険審査会による、平成21年(厚)第404号、平成22年5月31日裁決は神経症圏の傷病についての分析が詳しく掲載されております。重要な箇所をご紹介いたします。
 
「神経症も、原則的に治癒可能」であり、「神経症については非常に長く続く強迫神経症など、まれには2級程度のものもあり得るかもしれません。しかし、これも原則的には、治る可能性がある訳ですから、あまり対象にしない方がいいと思われます。特に神経症で生活を保障しますと、病気の中にかくれてしまって、自分で治す意欲がなくなってきて、患者のためにならないといってよいと思います」(昭和〇年〇月開催の廃疾認定講習会での笠原章東京大学教授(御用学者)の講演録)を、当時の厚生省の職員に向けての講演での中身を厚生省の都合の良い部分を援用したと思われます。昭和40年改正前は神経症は対象傷病になっていませんでしたが、40年改正により観念的には、神経症を含むすべての精神疾患(疾病)が対象となりましたが、「自己治癒可能性」及び「疾病利得」を理由に上記の笠原章東京大学教授の意見を取り入れまして、厚生省から次のような通達が発しられました。                       
「今回の法別表上は精神病質及び神経症についても障害の対象になるものであるが、・・・神経症については、通常その病状が長期的にわたって持続することはないと考えられることから、原則として障害の状態と認定しないものとすること。」(昭和年40年6月5日庁保発第21号通達)という取り扱いがなされることになってしまいました。
 
 
 
◆ 神経症が認定の対象となる場合。
 
同上裁決より
 
神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態をし示しているものにつては統合失調症又はそううつ病に準じて取り扱うとされている。なお、この「精神病の病態を示しているもの」が具体的に何を示しているかは、認定基準の解説に示されていない。
強迫性障害は、単に心の問題や心理的な基盤に立つ疾患ではなく、セロトニン代謝異常と心理的な要因やもともと患者が有している脆弱性、体質などが関係して発症する、うつ病など内因性精神病と同一のグループに属するものであるとの見解が有力視されつつあるが、保険者精神科の言うように、まだ精神医学界の確立した知見となったわけではない。セロトニン代謝異常が強迫性障害を生じさせたのか、強迫性障害ががセロトニン代謝異常を生じさせのかという問題が残るからであるが、うつ病といった内因性精神病に分類される疾患と強迫性障害の米田の壁が今まで考えられてきた以上低いことは確かである。
以上のことを踏まえて、請求人の当該傷病が対象傷病であるかどうかを検討すると、同人は現在のところうつ病に伴う典型的な臨床症状を呈していないものの、当該傷病は、いわゆる内因性精神病であるうつ病との類縁が疑われ、同人は平成〇年〇月〇日に精神科を受診し、うつ病治療薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬である〇〇〇の服用により、一時的であるにしても症状の改善・軽快を認めるものの、その経過は〇〇年以上に及び、請求人の生来の知的障害(〇〇〇)という脆弱性もあって自己治癒子脳性に伴う葛藤もなくなっているのであるから、それは神経症の本質である自己治癒可能性が極めて疑わしいと言わざるを得ないので、問題がある医師照会の結果をもって同人の当該傷病は対象傷病でないとした保険者の判断は妥当とは言えない。
本件障害の状態は、病状として、軽度の精神遅滞と強迫行為が指摘され、数時間から1日に及ぶ入浴や手洗いが認められ、これを中断すると不安、興奮を呈する、とされ、日常生活能力の判定では、身辺の清潔保持、身辺の安全保持及び危機対応が、自発的に又は概ねできるが援助が必要な程度とされているものの、適切な食事摂取、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人とpの意思伝達及び対人関係がいずれも自発的でないが援助があればできる程度とされ、日常生活能力の程度は(4)で「援助が無ければ日常生活の維持は不可」とされるのであるから、このような状態は、日常生活が著しい制限を受けるものに相当する程度に至っているというべきである。