◇新基準による初診日の認定に用いる資料等の事例について
 
1、初診日の認定に用いた資料等の事例について
障害年金は、初診日において被保険者であること、また、保険料納付要件を満たしている必要があることから、初診日の判断を適正に行う必要があります。このため、障害年金を請求するに当たっては、初診日を明らかにすることができる書類として、原則として、医療機関による証明書(以下「医証」という。)を求めることになります。しかしながら、初診日から長期間を経て請求する際などには、カルテの保存期間(5年間)の経過や医療機関の廃院等により、初めて受診した医療機関の医証が得られないことがあります。
このような場合には、申請者の状況に応じ、幅広い資料を参照しながら、客観的に初診日を判断することになります。
 
2、新基準による初診日の認定に用いる資料等の事例について
新基準により初診日を認定する際には、第三者証明や、診察券など本人申立て初診日について参考となる資料を確認して初診日を認定します。
また、初診日が特定できなくとも病歴や就労状況、第三者証明等、医学的な見地から一定の期間内に傷病の初診日があることを推定するとともに、保険料納付要件などを考慮し、本人申立て日を初診日として認定できるか判断することになります。
 
◇ 事 例 
 
(概要)
請求 : 平成27年11月
請求傷病 : 統合失調症
申立て初診日:平成2年11月頃
(判定)
2番目に受診した平成4年10月初診のB医療機関(受診期間:平成4年10月~平成23年5月)の受診状況等証明書に、「非定型精神障害の疑い。平成2年5月頃から被害妄想や周囲への過敏症を認めた。当時は自然軽快したが、同年11月より同様の症状を認め、近医(Aクリニック)で構成心薬開始となった」との記載があり、平成2年11月は全期間厚生年金保険の被保険者であるため、本人申立て(平成2年11月頃)を認め、月末の平成2年11月30日を初診日とした。
(ポイント)
相当因果関係を認めて初診日を判断した事例です。
・B医療機関に受診した期間は請求日より5年以上前であり、提出された受診状況等証明書は「初診時の診療録」より作成されたものであるため、請求日より5年以上前に作成された資料(診療録)に基づき作成されたものであることを確認できます。
 
・請求傷病「統合失調症」と「非定型精神病疑い」の相当因果関係を認めた上で、Aクリニックの受診を初診とします。
 
 
◇ 知的障害や発達障害と精神疾患が併発する場合の一例
    
                  平成23年7月13日【給付情2011-121】
前発疾患後発障害判定
 発達障害 うつ病同一疾病
 発達障害 神経症で精神病様態同一疾病
 うつ病
 統合失調症
 発達障害診断名の変更
 知的障害(軽度) 発達障害同一疾患
 知的障害 うつ病同一疾患
 知的障害 神経症で精神病様態別疾患
 知的障害
 発達障害
 統合失調症
前発疾患の病態として出現している場合は同一疾患
(確認が必要)
 知的障害
 発達障害
その他精神疾患別疾患
 
(1)知的障害と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、知的障害が起因して
   発症したという考え方が一般的であるから「同一疾患」とする。
 
(2)発達障害と診断された者に後からうつ病や神経症で精神病様態を併合した場合場
   合は、うつ病や精神病様態は、発達障害が起因して発症したものとの考えが一般
   的であることから「同一疾病」として扱う。
 
 (3) うつ病又は統合失調症と診断されていた者に後から発達障害が判明するケースに
   ついては、そのほとんどが診断名の変更であり、新たな疾病が発症したものでは
   ないことから別疾病とせず「同一疾病」として扱う。
 
 (4)知的障害と診断された者に後から神経症で精神様態を併発した場合は「別疾病」
    とする。ただし、「統合失調症(F2)」の病態を示している場合は、統合失調症
    が併発した場合として取り扱い、「そううつ病(気分(感情)障害)(F3)」の
    病態を示している場合は、うつ病が併発した場合として取り扱う。
 
(5)知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされているので、知的
   障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に後から発達障害が診
   断され障害等級に該当する場合は、原則「同一疾病」として扱う。
    例えば、知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の
   症状が顕著になった場合などは「同一疾病」とし、事後重症扱いとする。
    なお、知的障害を伴わないものや3級不該当程度の知的障害がある者について
   は、発達障害の症状により、初めて神慮を受けた日を初診日とし、「別疾病」と
   して扱う。
 
 (6) 発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少な
    いとされていることから原則「別疾病とする。
     ただし、「同一疾病」と考えられるケースとして、発達障害や知的障害の症状
   の中には、稀に統合失調症の様態を呈するものがあり、このような症状があると
   作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に伏してくることが
   ある。従って、このような場合は、「同一疾病」とする。