腎疾患・人工透析<認定基準(腎疾患)    
 
 
第12節/腎疾患による障害
腎疾患による障害の程度は、次により認定する。
 
1 認定基準
腎疾患による障害については、次のとおりである。
 
1級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
 
2級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
 
3
身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
 
2、認定要領
(1)腎疾患による障害の認定の対象はそのほとんどが、慢性腎不全に対する認定である。
 慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいう。
すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性がある。腎疾患げ最も多いものは、糖尿病性腎症、慢性肝炎(ネフローゼ症候群を含む)、腎硬化症である。
他にも、多発性襄胞腎、急性進行性腎炎、腎孟腎炎、膠原病、アミロイドーシス等がある。
 
(2) 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見がある。
 
(3) 検査としては、尿検査、血球算定検査、血液生化学(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質等)、動脈血ガス分析、腎生検等がある。
 
 病態別に検査項目及び異様値の一部を示すと次のとおりである。
 
① 慢性腎不全
 区分
 検査項目
 単位
 軽度以上
 中程度以上
 高度以上
 ア
 内因性クレアチニンクリアランス
 ml/分
 20以上
30未満
 10以上
20未満
 10未満
 イ
 血清クレアチニン
 mg/dl
 3以上5未満
 5以上8未満
 8以上
 
(注) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えてeGFR(単位はml/分/1.73m二乗)が10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中程度異常と取り扱うことも可能とする。
 
②ネフローゼ症候群
 区分
 検査項目
 単位
 異常
 ア
 尿蛋白量
(1日尿蛋白量又は尿蛋白/
 尿クレアチニン比)
 g/月
 又は
 g/gCr
 3.5以上を持続する
 イ
 血清アルブミン(BCG法)
 g/dl
 3.0以上
 ウ
 血清総蛋白
 g/dl
 6.0以上
 
(5) 腎疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。
 
一般状態区分表
 
 一般状態
 ア
 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
 イ
 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
 ウ
 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
 エ
 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
 オ
 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベット周辺に限られるもの
 
(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。
 
   障害の状態
  
1級   
前記(4)①の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のオに該当するもの
 2級
1.前記(4)①の検査成績が中程度又は高度の異常を1つ以上示すともので、かつ、一
般状態区分表のエ又はウに該当するもの
2.人工透析療法施行中のもの
 3級
1.前記(4)①の検査成績が軽度、中程度又は高度の異常を1つ以上示すもので、か
つ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
2.前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を
示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
 
(7) 人工透析療法中のものについては、原則として次により取り扱う。
人工透析療養中のものは2級と認定するなお、主要症状、人工透析療法施行中の」検査成績、長期透析によろ合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。
 
イ 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を始めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。
 
(8) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。 
 
(9) 糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症、多発性襄胞腎、腎孟腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても相当因果関係があるものと認められる。
 
(10) 腎疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見もまた様々なので、前期(4)の検査成績によるほか、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定する。
  
(11) 腎臓移植の取扱い
ア 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に把握して総合的に認定する。
 
イ 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。
 
障害等級の判断
 
  慢性腎不全 
検査成績    一般状態区分
 オ エ
高度異常が1つ以上1級2級2級又は3級3級
中等度以上1つ以上   2級  2級    2級又は3級  3級
軽度異常が1つ以上   3級  3級 3級  3級
 
人工透析療養中のものは2級と認定されます。
 
 ネフローゼ症候群
検査成績一般状態区分
尿蛋白異常値3級3級
血清アルブミンいずれかが異常値
血清総蛋白