精神障害
精神障害は、障害認定基準で次のように分類されています。
A | 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情障害(双極性障害)) |
B | 症状性を含む器質性精神障害 |
C | てんかん※ |
D | 知的障害 |
E | 発達障害 |
※てんかん単独につきましては弊所ではご依頼を賜ることはできません。てんかんと他の精神病態(神経症、人格障害を除く)が併発している場合はご依頼賜ります。
認定の困難な精神障害の中でも特に障害年金の受給権を得ることが困難な、「A統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情障害)」と「E発達障害」についてみていきます。
以下は認定要領です。
A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分障害
(感情障害、双極性障害及びうつ病)
各等級に認められるものを一部例示すると次の通りである。
1級
1.統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著名なため、常時の援助が必要なもの
2.気分(感情)障害にによるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級
1.統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため 人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの
2.気分(感情)障害にによるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級
1.統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり 人格変化の程度は著しくはないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの
2.気分(感情)障害にによるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくはないが、これが持続したり、又はり返し、労働が制限を受けるもの
(1) 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害の認定に当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。
ア.統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表、厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転をみることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもある。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時から療養及び症状の経過を十分考慮する。
イ.気分(感情)障害は、本来、症状の著名な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは、不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。また、統合失調症等とその他認定の対象となる精神疾患が存在しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(2)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。また、現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
(4)神経症にあては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。
なお、認定に当たっては、精神病の状態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。
E 発達障害 (平成23年6月30日創設)
各等級に認められるものを一部例示すると次の通りである。
1級
発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常に常時援助が必要なもの
2級
発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級
発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
(1)発達障害とは、自閉症その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。
(2)発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係がや意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けていることに着目して認定を行う。
また、発達障害とその他認定対象となる精神疾患が併合しているときは、併合(加重)認定は行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
(3)発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする。
(4)日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。
(5)就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮の下で労働に従事している。従って、労働に従事していることくをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認した上で日常生活能力を判断すること。
◆国民年金・厚生年金保険 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」平成28年9月よりこの項は各共通の精神障害のものです。
◆ 障害等級の目安
判定平均/程度 | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |
3.5以上 | 1級 | 1級又は2級 | |||
3.0以上 2.5未満 | 1級又は2級 | 2級 | 2級 | ||
2.5以上 3.0未満 | 2級 | 2級又は3級 | |||
2.0以上 2.5未満 | 2級 | 2級又は3級 | 3級又は 3級非該当 | ||
1.5以上 2.0未満 | 3級 | 3級又は 3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
(表の見方)
1、「平均判定」は、診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段評価について、程度の軽い方から1~4の数値に置き換え、その平均を算出したものです。
「日常生活能力の判定」は以下の7項目があります。
(1) 適切な食事ー配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。
□ できる
□ 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
□ 自発的かつ適正に行うことがはできないが助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
(2) 身辺の清潔保持ー洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。
また、自室の清掃や片付けができるなど。
□ できる
□ 自発的にできるが時には助言や指導を必要とする
□ 自発的かつ適正に行うことがはできないが助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
(3) 金銭管理と買い物―金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。
また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。
□ できる
□ おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
□ 助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
(4) 通院と服薬(要・不要)ー規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができる。
□ できる
□ おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
□ 助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
(5) 他人との意思伝達ー他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
□ できる
□ おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
□ 助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
(6)身辺の安全保持及び危機対応ー事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
□ できる
□ おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
□ 助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
(7) 社会性ー銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。
また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
□ できる
□ おおむねできるが時には助言や指導を必要とする
□ 助言や指導があればできる
□ 助言や指導をしてもできない若しくは行わない
2、「程度は」は診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指します。5段階評価は以下の項目です。
(1)精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
(2)精神障害をを認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。(たとえば、日常的な家事をこなすことはこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難を生じることがある。社会行動や自発的な行動が適切にできないことがある。金銭管理はおおむねできる場合など。)
(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。(たとえば、習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする。社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある。金銭管理が困難な場合など。)
(4)精神障害を認め、日常的な生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。(たとえば、著しく適正を欠く行動が見受けられる。自発的な発言が少ない、あっても発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。金銭管理ができない場合など。)
(5)精神障害を認め、身のまわりのこともほとんでできないため、常時の援助が必要である。(たとえば、家庭内生活においても、食事や身のまわりのことを自発的にすることができない。また、在宅の場合に通院等の外出には、付き添いが必要な場合など。)
3、表内の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることとします。
(留意事項)
障害等級の目安は総合評価の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他要素を含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得ることに留意して用いてください。
◆ 総合評価の際に考慮すべき要素の例 (共通事項)
1、現在の病状又は状態像
◆ 考慮すべき要素
〇 認定の対象となる複数の精神疾患が共存しているときは、併合(加重)認定の取いは行わず、諸症状を総合的に判断する。
〇 ひきこもりについては、精神障害の病状の影響により、継続して日常生活に制限が生じている場合は、それを考慮する。
2、療養状況
◆ 考慮すべき要素
〇 通院の状況(頻度、治療内容など)を考慮する。薬物治療を行っている場合は、その目的や内容(種類・量(記載があれば血中濃度)・機関)を考慮する。また、服薬状況を考慮する。通院や薬物治療が困難又は不可能である場合は、その理由や他の治療の有無及びその内容を考慮する。
3、生活環境
◆ 考慮すべき要素
〇 通院の状況(頻度、治療内容など)を考慮する。薬物治療を行っている場合は、その目的や内容(種類・量(記載があれば血中濃度)・機関)を考慮する。また、服薬状況を考慮する。通院や薬物治療が困難又は不可能である場合は、その理由や他の治療の有無及びその内容を考慮する。
4、就労状況
◆ 考慮すべき要素
〇 労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。
〇 援助や配慮が常態化した環境下では安定化した就労はできている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
〇 相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。
〇 就労の影響により、就労以外の場面で日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の両方の状況を考慮する。
〇 一般企業(障害者雇用制度による就労は除く)での就労の場合は、月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的に判断する。
◆ 具体的な内容例
〇 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
〇 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営業・家族等で就労している場合はでも、就労系サービスや障害雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。
5、その他
◆ 考慮すべき要素
〇 「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」に齟齬があれば、それを考慮する。
〇 「日常生活能力の程度」の平均が低い場合であっても、各障害の特性に応じて特定の項目に著しく偏りがあり、日常生活に大きな支障が生じていると考えられる場合は、その状況を考慮する。
総合評価の際に考慮すべき要素の例
気分(感情)障害
1、現在の病状又は状態像
◆ 考慮すべき要素
〇 現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年間程度の症状の変動状況なそ)及びそれによる日常生活能力等の状態や予後の見通しを考慮する。
◆ 具体的な内容例
〇 適切な治療を行っても症状が改善せずに、重篤なそうやうつの症状が長期間持続したり、頻繫に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する。
2、療養状況
◆ 考慮すべき要素
〇 入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)を考慮する。
〇 在宅での療養状況を考慮する。
◆ 具体的な内容例
〇 病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合は、1級の可能性を検討する。
〇 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級または2級の可能性を検討する。
3、生活環境
特に記載はありません。
4、就労状況
◆考慮すべき要素
〇 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
〇 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況をを参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの譲許を考慮する。
〇 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
〇 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。
〇 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
〇 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。
5、その他
〇依存症については、精神病性障害を示さない急性中毒の場合及び明らかな身体依存が見られるか否かを考慮する。
統合失調症
1、現在の病状又は状態像
◆ 考慮すべき要素
〇 療養及び症状の経過(発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況)や予後見通しを考慮する。
〇 妄想・幻覚などの異常体験や、自閉・感情のの平板化・意欲の減退などの陰性症状(残遺状態)のを考慮する。
◆ 具体的な内容例
〇 陰性状態(残遺状態)が長期間持続し、自己管理能力や社会的役割遂行能力に著しい制限が認められれば、1級または2級の可能性を検討する。
2、療養状況
◆ 考慮すべき要素
〇 入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)を考慮する。
〇 在宅での療養状況を考慮する。
◆ 具体的な内容例
〇 病錬内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合は、1級の可能性を検討する。
〇 在宅で、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級または2級の可能性を検討する。
3、生活環境
特に、記載はありません。
4、就労状況
◆ 考慮すべき要素
〇 安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
〇 発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。
〇 仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。
5、その他
◆ 考慮すべき要素
〇 依存症については、精神病性障害を示さない急性中毒の場合及び明らかな身体依存がみられるか否かを考慮する。